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経済の研究No.04
街金の金利は高すぎる

 かつてはサラ金地獄と呼ばれ、世の悪の元凶のように言われた消費者金融ですが、最近は大手金融が最高益を更新し続けて、急拡大中です。相変わらず借金をする人は減りませんし、自己破産をする人も少なくありません。自己破産の原因は借り手の責任と言われていますが、無計画で借りること以上に、高すぎる金利が問題なのです。近頃は年利100%、200%なんてのは無くなっていますが、それでも闇金利では存在するそうです。利息制限法で貸し出し上限金利が18%に制限されていますが、この法律には抜け道があって、利用者が払ってしまった場合は18%を超えても違法ではないとされています。したがって、大手金融でも一般ローンは25〜30%の高水準です。
 そもそも金利が30%とというのは無謀な話です。無借金の融資希望者であっても、銀行が無担保で貸す金は一人50万〜100万円です。それ以上の資金が必要だからこそ、街金で借りるのです。緊急性が高い場合はとくにそうですが、一般に街金の借り換えに金を貸す銀行はありません。100万円を一年間借りたなら、元本金利で130万円であり、分割返済しても月々10万円は返済する必要があります。二年間の分割返済でも月々6万円の返済です。はっきりと言えば、無謀な話です。金利30%が許されている理由は、街金の規模が小さかったことが理由です。大口の貸し倒れは街金の倒産に直結しますから、リスクを含めて30%まで許容しましょうという意図がありました。また銀行は街金に直接融資しませんから、街金の調達コストが高く付いていたことも理由です。
 しかし、今の時代に年利30%は馬鹿げていないでしょうか? 最近は武富士、プロミス、アコム、レイクといった大手金融の寡占化が進み、彼らの多くは株式上場までして、銀行からの資金調達や、市場からの直接調達に乗り出しています。こんな会社が30%も金利を取らなくては経営できないはずがありません。おそらく15%でも十分に利益が上がるはずです。利益が非常に大きいからこそ、無人契約機の設置や都心一等地への多店舗展開が可能なのです。こんな暴挙をいつまでも許しておくと、一層多重債務者が増えてしまうのです。
 欧米では気軽に消費者金融を利用できます。金利も一般銀行よりは高いそうですが、二倍も三倍も取るわけではありません。金利30%という敷居の高さは日本だけです。また、高い金利が取れるからこそ、信販会社などもカードローンを始めています。これがオーバーローンを招き、返済不能者を増やし、自己破産を招いているのです。リスク分以上の金利を得ていますから、与信が適当でも赤字にはなりません。まじめに返済する人の方がバカを見るばかりです。

 ただちに法定金利を15%に引き下げることが必要です。そして利息制限法を改め、業として金融を営むものは、法定金利を超えては成らないと明記することです。大手金融の巨大化に歯止めを掛けることができますし、オーバーローンの顧客の切り捨ても進むでしょう。そうすればオーバーローンの手前で更生する人が増えるに違いないでしょう。あるいは法定金利の超過は認めるが、一定割合の罰金を徴収し、これを多重債務者対策に当てるという手もあります。
 小規模な街金の救済が必要とする向きもあるかもしれませんが、そもそも小規模な街金は無くなるべきです。個人経営の銀行が日本に無くなったのに、街金はあります。それ故に闇金利や暴力取り立て、暴力団の資金源化を許しているのです。街金の調達金利を引き下げる代わりに、彼らが取る金利も引き下げます。これが本来の資本主義原理であるべきで、高い金利でも他に借入の選択肢を与えず、返済できない場合は裁判所が手先になって、個人資産の差し押さえをすような暴挙を許すべきではありません。
 また、無目的ローンの上限が15%になれば、現在の目的ローンも金利が下がります。10%前後になれば教育資金などを街金から借りる人も増えるでしょう。銀行も小口ローンを街金が負担してくれるなら本業に専念できますから、メリットも増えるはずです。消費者金融と銀行の棲み分け、消費者の賢い街金利用を促すためにも、まずサラ金規制法を改正し、法定金利を大幅に引き下げることを提案します。

98.01.17

補足1
 信販会社のジャックスはカードキャッシングの金利を法定の18%としています。これは異例のことですが、優良な顧客の利用を意図してのことだという話です。今度はさらに13%台の水準へ引き下げるそうですが、他の金融機関へも良い影響を結んで欲しいと考えています。ちなみに、この戦略でジャックスはカード会員を10%以上増やしました。

補足2
 サラ金で30%前後の金利を保証しているのは「出資法(正式名称は「出資の受け入れ預かり金及び金利等の取り締まり等に関する法律」)」です。1983年の「サラ金規制法(同「貸金業の規制等に関する法律」」)」の改正と同時に上限金利が40.004%に定められました。この当時の上限金利が109.5%であったため、毎年段階的に引き下げて施行5年目に達成するとした。現在30%であるのは、分割返済の際に事故等で全額一括返済となると、金利が40%を超えるためであったようです。1998年現在、さらに上限金利を引き下げる方向で議論が進んでいますが、自己破産の増加と大手による寡占が進んでおり、保護規制が不要との判断にあるようです。

補足3
 補足2のようになっていますが、現実に訴訟となれば、支払う金利は18%で済みます。あくまで18%以上はお客様の任意で支払われるもので、40%以下なら大目に見ようという話なのです。

補足4
 商工ローン問題で揺れる「全国貸金業協会連合会」は、出資法と貸金業規制法の改正案原案を自ら提案しました。一律だった上限を業態別に5段階に分け、大手上場企業の上限は年26.5%とするそうです。また貸金業規制法には、根保証を当初融資額の2倍まで、追加融資毎に保証人への通知を義務づけ、商工ローン大手の商法に規制を掛けるそうです。
 加えて出資法の上限金利は、元本30万円未満を年36.5%に、100万円未満を31.025%に、300万円未満を25.55%に、1,500万円未満を20.075%に、それ以上を15.0015%の五段階とし、大口融資の金利は大幅に抑制される方向だということです。結果として、日栄や商工ファンドの融資は、10%近い年利引き下げを強いられることになります。
 加えて罰則規定のなかった貸金業規制法に違反すると、最長1年間の業務停止や登録抹消の行政処分を受けることとの規程も加えるそうです。社会批判に応える形とはいえ、業界自らが規制の方針を打ち出したことは評価されます。この原案は、政府・与党が検討している改正案に盛り込まれる見通しで、詳細はこれから詰めを迎えることに成ります。

99.11.16
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