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経済の研究No.18
銀行はいつまで甘えるのか

 近頃の銀行の甘え体質は目に余ります。日頃は自由競争・規制緩和を口にし、行政の介入を阻止しようとするくせに、自己資本の充実と称して公的資金を導入させました。この公的資金は微々たるもので貸し渋りを解消するにはほど遠いようですが、政府としては出資者として潰せなくなった弱みを生みました。横並びの意図はその辺からも生じています。自由競争と言えば、証券子会社の設立、都銀の信託業務進出など他業態の利益ピンハネしか考えておらず、日本産業のことは視野にありません。規制緩和についても證券会社における総合口座について抵抗を示し、最近は証券各社と大蔵高官の癒着をリークしたりと卑怯に徹しています。
 そもそも証券市場が冷え込んだ原因は、極論して銀行のみにあります。次いで大蔵省も戦犯でしょう。彼らがバブル時代に過剰融資をしてバブルを盛り上げ、バブルが弾けると一転回収に走って自ら回収不能に陥れました。そして自己資本比率不足になるからと貸し渋り、公的資金の導入要請など我が儘勝手です。彼らの手元に資金が少ないのは、自由金利制に移行してからタダ同然の金利しか付けなかった銀行自身の責任であります。シティバンクは少ない店舗で預金獲得額を増やし続け、郵貯も安定性と金利で預金を集めており、都銀も横並びを諦めれば魅力ある商品作りができたはずなのです。

 ところで、公的資金は優先株、劣後ローン、劣後債に振り向けられるようですが、その金利は概ね1%前後です(経営危機に陥った日債銀は3%です)。危ないときに国から高額の融資を受けるのにこの厚顔です。しかも普通株は持たせないわがままですね。優先株とは普通株よりも若干配当が良い代わりに株主議決権がない株式です(ただし普通株への転換は両者の合意で可能です)。したがって大株主の持株比率を変更せずに発行できます。また劣後債劣後ローンとは返済順位が一番低い債権とローンで、返済されないリスクが高いものです。有期限のものがありますが、今回は日本興業銀行を除いて永久物(無期限)です。自主的に買い戻さない限り返済義務がないため、資本に繰り入れることができます。
 つまり国はジャンク債を掴まされた訳で、銀行を倒産させるには自らの出資を諦めざるを得ない状況に置かれました。おかげで今後都銀・信託銀の倒産は回避されるでしょう。国は一年以内の市場での売却を発表しましたが、そんなクズ債権を額面で買う投資家がいるでしょうか? 絵に描いた餅、机上の空論です。過去の事例では、住専処理問題で公的資金導入に金額を積み増す際、今後銀行が支払う法人税で埋め合わせるという説明でしたが、相次ぐ赤字決算で一向に公的資金は回収されていません。いつも表面だけの帳尻合わせなのです。
 さらに株式の評価も低価法から原価法へ切り替えることを認め、時代に逆行する(国際会計制度にも矛盾する)方法で銀行の含み損を拡大させました。おそらく都銀は今期も配当を出すでしょうが、実態は大赤字なのですから無配にすべきではないのでしょうか。配当余力は自己資本の充実にでも使うべきでないでしょうか。

 リストラなしに公的資金の導入はあり得ないということで、都銀・長信銀は相次いでリストラ策を発表しました。第13回などで指摘した通りですが、リストラ案が出揃って愕然とします。三菱信託150人(人件費4.0%削減)、興銀(同3.5%)とわずかな人員削減でリストラと称しています。彼らは一般企業にどれだけ厳しいリストラを強いてきたでしょうか。しかも銀行の給与はボーナスカットの範囲と変わらずです。さらに住友、富士、東海、あさひの各行は750〜850人の削減を打ち出すものの、これは毎年の自然減数の1.5倍程度であり、新規採用抑制で簡単に達成できる数字です。系列への出向を併用すれば実質的な痛みはほとんどありません。店舗削減も当初から合併で生じた重複店の閉鎖などの数字も乗せており、支店の出張所格下げなどコスト削減にはあまり貢献しないケースも多いです。
 政府はどこまで都銀に甘い顔を続けるのでしょうか。銀行なくして日本の経済が立ち行かないのは今は昔の話です。大手企業が直接金融に進出すれば銀行の役割は大きく後退します。やるべきことは企業が市場から資金を調達しやすい環境を提供するべく規制緩和を進めることであり、病んだ銀行を救済している場合ではありません。政府が強い姿勢で臨めば、銀行もいつまでも甘えていられないことを悟るはずなのです。

98.03.26

補足1
 不良債権処理は依然進みませんが、4大金融グループが出現したこともあって、大手銀行のリストラ努力が進んでいるそうです。2000年度の人員削減は、大手銀16行で8,700人(5.8%)に達しているそうです。同様に、第二地銀でも7,000人規模の削減が行われており、経費削減効果が見えて来始めています。従業員数が減少に転じた1994年と比較すると、2001年3月末には134行全体で10万人規模の削減になり、概算で25%も減った計算に成るようです。今後もこの傾向は続くと見られます。

01.06.30

補足2
 東京三菱銀行は、大手銀行では最初の退職年金削減にtyかうしゅしました。2003年4月以降の退職者に限定して、年金支給額を最大2割カットするとのことです。同行の退職金制度は、退職一時金と退職年金からなり、年金基金の運用実績をカバーできていない現状に合わせるというもの。当初運用見込みは年5.5%であったものの、過去10年間の実績は平均3%ということで、大手銀行は年金の運用さえも得意でないようです。今回の2割カットは運用見込みを年4.5%に引き下げたものだそうですが、さらに運用が悪化するともう一段の切り下げも必要になるのかも知れません。
 すでに退職した者の年金支給額も引き下げるのが本来ですが、一方的なカットは退職者の財産権を侵すことになるため、新規退職者に限定するようです。来春に期限を設けたことにより、退職予備軍の今年度中の大量退職も狙っているのでしょうか。

02.11.30

補足3
 日本興業・第一勧業・富士銀行の合併で誕生したみずほ銀行では、旧来の給与水準が高かった日本興業銀行出身者に対し、年収調整の目的で手当を支給しているそうです。しかし経営難の中でもあり、行内の給与体系を一本化すると共に、前記の手当を廃止するそうです。みずほグループは、人件費圧縮の一環として、従業員給与の最大二割削減を打ち出しており、その一つになる模様です。
 裏を返せば、複数行の合併により誕生した新銀行は、出身母体での処遇をそのまま継承してきたということです。合理化のためには、給与面だけでなく、機構面でも手を付ける必要があり、給与体系の一本化はその第一歩と言えそうです。ようやく大手銀行の雇用も、民間企業並みに変わってきました。

02.11.30
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