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経済の研究No.82
波間に消される日債銀

 急展開の話ですが、日本債券信用銀行(以下、日債銀)が一時国有化されるそうです。もともと日債銀の危機は1997年3月に明るみに出ました。主に系列ノンバンクへの融資が膨らみ、しかも不良債権化しているらしい、と報道されたのが引き金に成りました。日債銀は4月1日付けで系列ノンバンクを抜き打ち清算し、とりあえず生き残りました。自己資本が大幅に減少し、何度も債務超過であると指摘されてきましたが、それから1年8か月も命脈を保ってきました。
 最大の理由は、一時期殺到した金融債解約がストップし、固定化されていた問題債権の処理が進んで、利益回復に希望が持てるようになったことです。しかし自己資本の積み上げと資金量拡大が急務であることは指摘され続けていました。幸いにも市場からの撤退は要求されませんでしたが、いずれかの金融機関との合併は必要だと言われてきたわけです。次の理由は、市場の関心が薄れていたことにあります。1997年に大型金融機関の破綻が相次ぎ、また大手行がいずれも巨額の損失を計上するようになり、日債銀の経営悪化が際立たなくなったことです。しかも6月から長銀危機がクローズアップされたことも日債銀には救いになったようです。

 しかし命脈を保つウチに有効な対策は打ち出せませんでした。独立系金融機関の悲しさと、昨年の危機の際に次々に暴かれた問題債権(現実には他行と50歩100歩に過ぎません)が足枷になり、救済合併をしてくれる相手先が見つかりませんでした。長銀との合併も持ち上がりましたが果たせず、中央信託銀行に最後の望みを掛けましたが破れました。これで合併先は消えたと見た国が強制的に国有化を押し切る決断をしたのです。
#N9月末の日債銀の問題債権比率は23%を越えているそうです。長銀の13%に比べて過大ですが、長銀に比べて有価証券含み損は半分程度の上、問題債権の数字に誤魔化しがない(長銀は次々に問題債権が見つかっています)点で救いがあったと言えます。ただ問題債権の大半は依然として子会社周辺から出ており、昨年のノンバンク清算が根本的な解決ではなかったことが問題とされています。しかし日債銀といい、長銀といい、子会社のノンバンクや不動産管理会社から大量の不良資産が出てくるのは何故でしょうか。ここのところが、新聞などでは検討されていません。
 誰から見ても、不良資産の処分を進めないのは異様です。とくに地価下落が止まらないと判断された昨年の時点でも、簿価以上の高値で子会社などが実質的に自己競落を繰り返していたのは何故でしょうか。いずれ地価が回復すると思った・・・というのは言い訳です。自己競落までして簿価以上の値を付けていたのは、その問題物件を担保に差し出していた相手に対して、弱みがあると言うことです。その相手とは誰なのか・・・は公開されていません。

 日債銀の成り立ちについては第58回長信銀時代の終焉」で書きましたが、源流は旧朝鮮銀行にあるそうです。旧朝鮮銀行の残余資産を使って1957年に設立された日本不動産銀行が名称変更をして今日に至っています。独立系で有力な融資先を持たなかった同行がバブル期に突っ走ったことも書きましたが、その過程でかなりの政治案件を抱え込まされたと言われています。
 昨年の破綻危機において、バンカー・トラストとの提携を発表し、奉加帳方式で2,900億もの資金を行政主導で集めたことが、政治案件の多さを物語るものだと言われてきました。今回は国有化という手続が整備されたために、安心して政治案件ごとヤミに葬ることができると考えたようです。これから日債銀を引き受ける預金保険機構は、なぜ日債銀が不良資産を膨らませたのかを解明し、全てを白日の下へ曝さなくてはいけません。そして関与した政治家や行政の担当者を糾弾し、相応の責任を取らせるべきです。
 しかし、日債銀の国有化は急に展開しました。市場の誰もが唖然としていると思います。この点は次回に書くとして、今後どのような処理が進められていくのか、注視することにしましょう。くれぐれも、何もかも波間の下に沈めてしまうことがないよう、国税で政治案件の処理を進められてしまわないよう、願うばかりです。

98.12.12

補足1
#N4月に集められた資金2,900億円のうち、日銀の優先株が800億円で、その他は銀行12行と生保14社、損保8社が拠出したものです。いずれも大蔵省の意向に従っただけで、自発的に応じたものはありません。その際、大蔵省は「日債銀の再建は可能」とのお墨付きを与えていたと言いますが、そのお墨付きは、今でも機能するのでしょうか。
 このまま日債銀の破綻が認定されますと、2,900億円は全て紙切れになる可能性が高いのです。さらに債務超過ではないとして1998年3月に注入された公的資金600億円のデフォルトも避けられないでしょう。11日の終値ベースでは1株158円だった株式も、債務超過認定を受けると紙切れになります。政治案件を白日に曝さないためだけに、市場にこれだけ巨額の負担を強いるのが妥当かどうか、政府も慎重に判断して欲しいところです。
 まだ市場に見放されていない銀行を何のために国有化するのか、国有化した後にどう扱いたいのか、はっきりさせて欲しいところです。政府・大蔵省主導で行った日債銀再建計画が破綻した結果なのですから、金融監督庁も「ゼロ査定は出資者責任として当然」なんて戯言を口にしないで、行政側の責任者処分もはっきりと付けていただきたい。

98.12.12

補足2
 できれば金融監督庁の方の目に留まって欲しいのですが。
 金融監督庁は、たしかに新設された機関ですが、元々は大蔵省から分離した組織ですよね。もう分離したから大蔵省の悪行とは関係ない、というのは問題だと思うのです。未だに人事交流の途は閉ざされていないと言われていますし、かつて大蔵省で金融機関を指導してこられた方々も大勢いらっしゃると思います。なのに人ごと、正義の味方を気取っているのは何故ですか?
 今の貴方がたは大蔵省や政府の後始末を引き受けているにしても、同胞の失敗を尻拭いしているだけなのですよ。発言には慎重さと節度を持って下さることを期待します。

 長銀,みどり銀行,日債銀の件でも、出資をさせられた金融機関は自発的に応じたわけではありません。監督官庁から要請されて、極論すると脅されて、出資に応じたわけです。そして出資した分に見合うだけ経営危機に際して、全く関与できなかったのではありませんか。経営に関与できず出資を強制されたにも関わらず、出資者責任を平然と問う姿勢は、明かな誤りです。金融機関が負わされる負担は、そのまま預金者、つまり国民の負担になります。
 また株主についても同様です。貴方がたは株主は出資のリスクを当然に負うべきだと言うのでしょうが、債務超過ではない、破綻はさせない、必ず再建する、と言ったのは行政や政治家です。株主は行政の発言を信じて、政治家の発言を信じて保有し続けたわけです。彼らの責任をまず問いなさい。風説の流布でも何でも責任の問い方はあるでしょう。その上で株主に責任を問うのなら仕方がありませんが、そこまでできますか?

行政側の責任を問わず、政治家の責任を問わず、株主の責任だけを問うのは正義ではありません。政治的暴力です! 本当に正義の味方を気取られるのなら、公正な責任追及をして下さい。期待しています!!

98.12.12
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