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経済の研究No.189
デフレと呼ぶのは早すぎる

 ハンバーガーデフレ、牛丼デフレ、ユニクロデフレという言葉が飛び交っています。急速な値下げ現象を局地的に捉えて、デフレと呼んでいるようですが、これはメディアが必要以上に騒いでいるような気がします。まだデフレと呼ぶのは早すぎるのでは無いでしょうか?

■ 本物のデフレとは?
 デフレについては、第73回インフレとデフレ」で書きました。デフレーションとは、「一般的物価水準が低下する現象」であり、特定の物価のみが低下する現象ではありません。また低下の前提となる「物価水準」が、適正であるかどうかも重要なキーになります。例えば、住宅はバブル期に価格が高騰していましたが、これは実態と乖離したバブル価格でありましたので、「物価水準」を図る指標として採用するのは、不適切です。したがって、価格がバブル前の水準に下がっていることを以て、住宅デフレと呼ぶのは誤りです。
 上記したハンバーガーや牛丼についても、物価水準をどう捉えるかで、デフレ到来であるのかどうか検証する必要があります。これは順に述べるとして、一例に鶏卵を考えましょう。鶏卵は、戦前まで超高級の滋養食品として、低所得者が口にする機会がありませんでした。しかし、戦後に養鶏業が発達したことにより、鶏卵の安定供給が実現され、現在では1ダース110円前後で提供されています。これをデフレと呼ぶ人は無いでしょう。

 割安な海外製品の導入や、大量生産による安定供給、生産・物流・小売業者の技術革新によるコスト削減といった要素により、その価格が相対的に安くなる現象は、経済現象としてごく当たり前のことであり、デフレではありません。イギリスの産業革命がもたらしたのは何だったかを考えると、お分かりですよね。また、ブランドイメージ効果なども考える必要があります。イメージが相対的に低下すれば、価格が割安になるのは当然です。
 それでは、今の現象がデフレであるかどうか、検証してみましょう。

■ ハンバーガーデフレ
 まず、ハンバーガーです。ハンバーガー業界は、昔から激しい価格競争を繰り返してきました。欧米の食文化を象徴していたハンバーガは、その手軽さとは裏腹に高級品でありました。包材や紙袋、飲料パッケージなどに趣向を凝らして、高級感を演出していました。ところが、数多くのチェーンが多店舗化を図り、市場が飽和状態に達してくると、ブランドイメージの低下もあって、成長性に陰りが出てきました。ブランドの一般化は、ブランド価値を薄れさせる効果があります。
 一旦設定した価格を引き下げることは、自ら商品ブランドの低下を認めることに成ります。このため、飲料などとのセット割引、期間限定割引などを案出し、実態としては値下げする手法を取りました。サンキューセットなど割安感を全面に打ち出して、激しい価格競争を繰り広げたことは、記憶に新しいです。大手に成長したチェーン間での激しいバトルがあり、体力勝負に敗れたチェーンの縮小もありました。

 最大手のマクドナルドを見てみると、結果的に価格競争を勝ち抜いて、圧倒的なシェアを確立しています。しかし、単純な値下げによって勝ち抜いたわけではなく、経営努力により値下げしても利益が出る体質を作り上げた意味が大きいです。店舗の標準化とローコスト化、包材などの簡素化、接客等の完全マニュアル化、宣伝費のパフォーマンス改善、客単価の向上と商品回転率の改善、製造原価の圧縮など、あらゆる努力が払われています。
 中でも製造原価の圧縮は、大きいようです。海外との物価水準を図る指標にもされるマクドナルドのハンバーガーは、欧米のモノと比較するとサイズが一回り以上小さく、パンなどもスカスカです。ハンバーグも100%ビーフを謳わなくなったので、ビーフ以外の肉も混ぜているのでしょうか。緩やかに品質を下げてきたために、消費者は気づきにくいですが、進出当初と比較すると、随分と貧相になっています。平日半額が売りものでもありますが、逆にいえば休日のみ割高という価格設定で、平日価格が相応の水準と見るべきかも知れません。
 結論としては、ハンバーガーの低価格化は、デフレ現象でないと考えます。

■ 牛丼デフレ
 牛丼が「並盛り1杯250円」などという低価格設定で、評判でした。国内で牛丼を提供するチェーンは数多いですが、長年市場に君臨したのは吉野家です。積極的なチェーン展開で無理を生じ一旦は経営破綻しましたが、セゾンに傘下入りしてからは堅実成長を続けてきました。そのブランドイメージは抜群であり、唯一の全国区チェーンとして、不動の地位を確立していたと言って過言では無いでしょう。
 吉野家も、店舗の標準化とローコスト化、マニュアル整備、パート比率のアップ、二四時間営業、積極的な販促、特盛り・サラダの導入よる客単価向上など、数多くの経営努力がされてきました。キャンペーンを除いては値下げも値上げもせず、安定した価格水準を維持してきたことが、顧客に安心感を与えていました。チェーンが拡大し、利益も確保していたのですから、それなりに大きなマージンを得ていたのは間違いありませんが、そのマージンはブランド効果によるプレミアムと見るべきでしょう。

 ところが、関東圏を中心に競合チェーンが成長してきました。外食や中食の拡大、不況による顧客シフトなど追い風もあり、各チェーンの成長は目を見張るモノがあります。しかし、ハンバーガーと同様に、消費者が毎日食するものではないため、来店頻度アップを実現しないことには、業績アップが難しくなっています。牛丼以外の定食を提供するチェーンもありますが、結果的に価格競争に移ってきています。
 某チェーンは、定常的に50円値引き券を配布していましたし、名目を付けては100円引きなどで、割安感を前面に出していました。ある程度までの値下げは、新規の需要を掘り起こし売り上げ増に繋がります。しかし、同業他社も値下げに突入し、異業他社も対抗値下げをしてくると、ハンバーガー業界同様に体力勝負に成っています。吉野家は静観を決め込んだようですが、他の全チェーンが値下げ戦争を始めたために、期間限定で値下げキャンペーンを行うことになりました。

 現在のところ、キャンペーンを終了したはずのチェーンでも、新たなキャンペーンとして値下げを続けているようです。結果的にブランド効果によるプレミア分を失ってしまい、消費者には値下げ価格が平常価格と認知されるように、変わりそうです。キャンペーン期間は、肉や飯の仕込みが追いつかないほどの盛況ぶりですが、終了と同時に閑散としてしまう以上は、当面も値下げキャンペーンが続くでしょう。こちらも体力勝負です。
 結論としては、牛丼の低価格化は、デフレ現象でないと考えます。

■ ユニクロデフレ
 中国地方から着実に店舗網を拡げてきたユニクロが、大いに注目されています。競合するはずの小売各社を圧倒し、低価格・大量販売により急成長を遂げています。多くの経済誌などで取り上げられ、大いに注目を集めています。広告宣伝などの妙もありますが、その実力の源泉は、徹底したコスト削減にあります。原料調達から生産・在庫管理まで、東アジアや東南アジアの安い労働力を活用して、これに精緻なマーケティング手法を組み合わせた、その結果が結実したと言われています。
 もともと衣料業界は、付加価値を付けることに重点が置かれています。毎年モデルチェンジを行ったり、多品種少量生産による個性化を打ち出し、国内外のアパレルがひしめくブランド競争でもありました。ユニクロの路線は、それに反していると言えます。少品種大量生産を導入しながらも、多くの在庫を持たない効率的な在庫管理と、ニーズやウォンツの変化をリアルタイムに反映する生産管理の見事さは、競合他社の追従を許しません。

 大手スーパーは、かつて海外生産によるコスト削減を図っていました。しかし、安かろう悪かろうというイメージは払拭できず、在庫管理や生産管理の不徹底もあって、安定した利潤を提供するには至っていません。かつてはイトーヨーカ堂の手法が評価されましたが、ユニクロの手法はそれを大きく上回っているようです。某スーパー社長をして、追いつくには10年の歳月が必要だと言わせるほどです。
 しかし同時に、価格破壊により新しい需要を掘り起こしたことを評価するべきでしょう。例えば、ジーンズ専門店では、多品種少量の品揃えで利益を確保するために、小売店のマージンが大きく上乗せされています。このために、ジーンズのブランドによるプレミアは大きく取られることに成りました。定価から大幅な値引きを行わないことで価格水準を高めに誘導し、激しい値引き競争を行わなかったため、高級品という位置づけにあります。ユニクロは、これに格安のジーンズをぶつけることで、薄利多売を実現したのです。もちろんジーンズに限定されず、全ての衣料品について言えます。

 大手スーパーは、せっかく格安で生産した衣料品を、心持ち安く販売することで数量を延ばし、利益を確保したわけです。かつては価格破壊の旗頭であったはずですが、専らブランドイメージの定着化を図り、収益の要にしていたようにも見えます。大手スーパーが、格安ジーンズなり格安スーツを消費者に提供していたならば、現在のユニクロ効果が早くに訪れていたと思います。現状では、ユニクロに対抗するためにブランドのプレミア分を削って、価格競争に走っています。価格競争に耐えられる体質を作っていないこともあり、大手スーパーの旗色が悪そうです。
 ユニクロは、低価格商品を提供しながらも立派にブランド力を維持し、なおかつ十分な利潤を得ています。大手資本が巻き返しに出ていますので、長期的にユニクロ効果を維持できるかどうかは疑問ですが、ここ数年は先行者利益を得ることができるでしょう。
 結論としては、ユニクロ効果は、デフレ現象でないと考えます。

■ むすび
 ハンバーガーデフレ、牛丼デフレ、ユニクロデフレと呼ばれる現象は、いずれも本物のデフレとは呼べそうにありません。確かに消費者が低価格化を求めていますが、現在の価格低下は企業努力あるいは値下げ競争によるもので、デフレ現象として歓迎してばかりもいられません。行き過ぎた企業努力は、ブランド力を低下させるだけでなく、ツケを消費者に負わせます。行き過ぎた値下げ競争も、品質低下等の不利益を受けるのは消費者です。提供される価格が、適正なもので安定的にあるのかを意識することが必要だと思います。
 消費者には、より賢い消費活動を求められていると考えるべきかも知れません。対価に見合わない商品やサービスには値下げを要求し、対価以上の付加価値を提供する風潮を歓迎することで、その利益を最大限享受することが必要だと思います。

01.05.31

補足1
 首位マクドナルドと激しいバトルを演じているのは、三位ロッテリアです。マクドナルドは、「創業価格プロモーション」と称した新値下げキャンペーンを導入しました。具体的には、ビッグマック200円、マックシェイク120円など。以前から質と価格で勝負を仕掛けていたロッテリアは、ビッグバーガーを190円、ロッテシェーキを100円などで対抗しています。今後もロッテリアから価格競争を仕掛けるそうですが、体力差は歴然なだけに、リスクが心配です。
 二位モスフードは、業績横ばい。以前から質重視で独自路線でしたが、不況の長期化やヒット商品の不在で苦戦中です。2001年3月期は減収減益で、かつての好業績を回復するのは難しそうです。新規店舗の出店と並行して閉鎖も進めているため、ドミナントに力点を置くマクドナルドに一層水を空けられているようです。マクドナルドは、近々株式公開する予定ですが、店舗改装費や人件費の負担増はこれからと見られ、予断は許されません。

01.06.03

補足2
 ダイエーは、ユニクロ型衣料店の出店構想を発表しました。PB衣料品を中心に販売する計画で、年間40店の出店を計画しているそうです。これまでにジーンズ専門店やシューズ専門店で失敗し、衣料専門店で巻き返したい意向とのことです。しかし、型から入るスタイルは相変わらずで、ユニクロもどきは作っても、ユニクロを越えることは無さそうです。
 ちなみに本文の安売りを仕掛けている牛丼チェーンは、ダイエー系の「神戸らんぷ亭」です。かつてマクドナルドと離間して独自ハンバーガーチェーンも手がけたことがあります(昨年にマクドナルドと和解)が、いずれも四番手以下に甘んじています。むしろユニクロと業務提携する方がノウハウも入って、集客力も上がって良いと思うのですが、他社との提携は下手な印象を受けます。

01.06.03

補足3
 ユニクロを展開するファーストリテイリングは、食品事業進出の計画を持っているそうです。商品企画から生産・販売までを垂直管理して利益を上げるビジネスモデルを活用し、二匹目のドジョウを狙うようです。が、ビジネスモデルの応用と称して多角化に失敗した企業も少なくなく、得意分野を一層極める選択肢もあると思います。投資可能な資本には限りがありますが、それを市場シェア拡大に向けるか新規市場に向けるかは判断の難しいところであります。
 セーフガード問題では、中国とトラブルも続いています。中国工場に依存しているユニクロにとっても、少し心配があるところでしょう。中国の技術レベルが向上してくれば、いつまでも安い下請けの地位に甘んじていません。それだけにノウハウを磨くことに専念する方がメリットを生みそうだと思います。

01.06.03

補足4
 政府によるデフレの定義は「持続的な物価下落」だそうです。何とも抽象的な定義で、無用に危機感を煽りそうな定義ですね。本格的なデフレが到来すれば、企業の収益が減少(もしくは赤字化)、労働賃金の低下、消費意欲の減退(低迷)、価格下落というデフレ・スパイラルに嵌ることに成ります。幸いにも、本文中の三現象は、スパイラルを招きそうにありません。
 良いデフレと悪いデフレがあるのなら、良いデフレを歓迎し、悪いデフレを抑制するのが好ましいと思います。良いデフレとは、企業努力により価格が下がり企業も潤う物価下落と仮定。悪いデフレとは、赤字覚悟でも売るしかない、企業のお先真っ暗な状態と仮定。現在進行している債務圧縮や構造転換を推進し、大多数の企業が適正な利潤を得られる安定状態を演出することと成るでしょうか。それには、政府の本腰を入れた経済対策が必要だと言うことに成りますね。
 第73回インフレとデフレ」も参照してください。

01.06.03

補足5
 7月から、吉野家が牛丼並盛を280円に値下げしました。キャンペーンではなく、定価を三割も値下げしたのですから、これは大きな変化です(ただし、大盛は12%引き、特盛は10%引きに留まります)。値段的には、1970年代の水準だそうですが、それでも利益が出るそうなので、驚きです。我々は、随分と高い牛丼を食べさせられていたことに成りますね。
 吉野家は、キャンペーン期間こそ並盛250円で対応していましたが、基本的に値下げ競争には消極的でした。しかし、生産性向上と、原材料調達、本部運営コストの削減で採算目処が立ったという説明で、あっさり値下げです。自ら不毛とした値下げ競争ですが、その結果はどうなりますでしょうか。値下げ先行の他社がギブアップすると、再び値上げに転じるのかどうか興味があります。

 また、日本マクドナルドが株式公開を行いました。これで市場からの資金調達が積極的に行えますが、随分と不透明な経営をしているとのこと。とくにオーナーの藤田氏のファミリー企業との関係が、不安材料です。店舗数を急拡大していますが、いつか飽きられたときは・・? 今の見込みで採算ベースでも、売り上げが低迷すれば採算割れです。果たしてどこまで値下げ競争を続けられるかが、本稿の最大の関心事項でもあります。

01.08.26

補足6
 日本マクドナルドは、ハンバーガーの平日半額販売(2000年2月から実施)を打ちきるそうです。地方で一律80円・100円などで試験的に販売し、平日と休日の価格差を順次解消していくと報道されています。
 平日半額販売により、平日のハンバーガー販売個数は5倍まで増加したそうですが、不当な二重価格が不正競争防止法等に抵触する可能性もあり、見直すものと見られます。それ以上に、平日価格65円より高値で設定する意向から、実際は利益が十分に出ないことが本音ではないかとの見方もあります。
 株式の公開も実現したことから、不透明なサービスを改め、健全な市場作りの一翼を担う良い試みとなるかも知れません。競合各社の動向も気になるところです。

01.12.29

補足7
 ドラッグストアの大手5社は、2001年度の業績がいずれも堅調であったようです。客単価が下落しているものの、経費節減や新規出店効果で増収増益を確保しているようです。独自開発商品(PB)の割合を増やすなども効果があるようです。ただし一頃のような拡大路線を見直し、不採算店舗や小規模店舗の閉鎖を進めるなど体質強化にも務めているとのことで、消費者には嬉しい値下げ競争も起きているそうです。
 一方で、好調であったユニクロを展開するファーストリテイリングは、2002年8月期の売り上げが減収減益になると発表し、デフレ時代の「勝ち組」の評価も見直されているようです。業績低迷の最大の原因は既存店の客数減少で、要するに消費者に飽きられたということのようです。かつて良品計画の「無印良品」も同じ轍を踏んでおり、今後の事業戦略次第で「勝ち組」として生き残れるかどうか難しい局面となりそうです。9日の株価はストップ安の10,550円を付け、ピーク時の1/3まで下落しています。

02.01.14

補足8
 本稿を書いてから1年半が過ぎました。懸念されたデフレブームは、勝ち組とされた各社にも打撃を与えています。

 ユニクロは急激に失速し、多店舗展開が裏目に出てしまいました。決定打となる新商品を欠き、顧客を繋ぎ止めるブランド力に、衰えが生じたと指摘されています。一過性ブームに悪ノリした感さえあります。顧客ニーズを正確に把握し、手堅く定番商品を育てる基本姿勢を取り戻せば、まだまだ成長できるでしょう。海外進出は時期尚早という気がしますが、GAPを越える世界ブランドを目指すと鼻息が荒く、気になるところです。
 マクドナルドは、平日半額セールを撤回して実質値上げに走ったことが、顧客離れを生みました。慌ててハンバーガー59円に値下げしましたが、自らブランド価値を下げる結果となり、業績は大幅に低迷しています。狂牛病問題や不況の責任ばかりでなく、過剰出店によるドミナント展開の失敗、顧客無視の商品開発、ポイントカード等の短命キャンペーンなど多くの問題が指摘されています。過剰出店によるドミナント展開の失敗は、競合するスターバックスも嵌っている問題です。ブランド力の回復に期待します。
 牛丼業界は、狂牛病問題が急ブレーキとなり、値下げ価格に張り付いたままの利潤なき競合状態であるようです。うかつな値上げもできず、サイドメニューやサブメニューによる客単価アップを狙っているようです。競合の外食・中食業界と低価格帯顧客の奪い合いを演じていることも、体力消耗に繋がっていると言われます。まだ破綻するチェーンは出ていませんが・・。

02.12.15

補足9
 マクドナルドのドミナント戦略は、価格戦略にミスを生じなければ、もう数年成功が続いたことと思われます。1992年に1,000店舗も無かったものが、2001年には4,000店舗に達しました。10年足らずでの躍進は、ハンバーガーの平常食化に迫ったと思われます。
 平常食であれば、自ずとマージンは制限を受ける(米飯、食パンと同じ)わけですから、従来の嗜好品としてのマージン乗せ価格に切り返せば、客が離れるのは当然のことです。59円バーガーは、マクドナルドには「血の出る値段」でも、客には「昔から値下げ可能だった値段」と見られました。かつて100円バーガーに列を成した客から見れば、59円バーガーはあまりにバカにした値段であり、かつ他のバーガーが高止まりしていることに割高感を強く持ったことに成ると思います。

#Nと2003年は店舗閉鎖を加速させ、総店舗数は横ばい並みに成ります。価格競争によるドミナント戦略が失敗した現状では、新しいビジネスを生み出すことなく店舗数を拡大するのは、自殺行為に直結します。藤田会長の「1万店構想」は足踏みになるものの、良い選択かと思います。ちなみに2002年下半期の経常利益は7億円の赤字で、二十年ぶりのことだそうです。

03.01.03

補足10
 ミスタードナツが、100円均一セールに病み付きのようです。全国的な傾向であるのか把握していませんが、東京圏では1か月に2回以上のキャンペーン実施店が増え、値引きの向上化が進んでいます。キャンペーン告知期間を含めると、1か月の半分は100円均一セールの告知をしていることになります。セール時に客足は増えても、それ以外では客足が遠のくのではないでしょうか。
 そもそもミスタードーナツは、オリジナルグッズで若者客を取り込むことに成功し、競合のダンキンが撤退した後も検討してきました。商品の幅を持たせるために飲茶コーナーの併設などにも踏みきりましたが、こちらは平成12年の「大肉まん無認可添加物混入問題」で信用を落としました。その結果かどうか、売り上げ低迷の歯止めを掛けるべく、従来は数ヶ月に1度の顧客感謝セールが、売り上げ梃子入れセールと化しています。

 また一方で、ブランド低迷を食い止めるためか、100円均一セール時には高級ドーナツを店頭に並べない店舗も出ています。90〜120円のドーナツのみを陳列すれば、顧客の期待を裏切ることになり、マイナス効果だと思います。店舗レベルでの判断なのか、本部レベルの判断なのか、一層のブランド低迷を呼ぶのは、間違いありません。

03.02.08
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