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政治の研究No.56
イレギュラーは社会を救う

 国政レベルでは、文部省を中心に学校教育を通して少年教育は成しうると考えています。正しい道徳観を植え付け、画一的な価値観を身につけさせることで、「正しい少年」達が育成できると考えているようです。彼らの構想は素晴らしいのですが、それを実現するためのスタッフを揃え切れていません。正しい表現をするならば、彼らは「正しい少年」達の育成に成功したが、少年たちが融通の利かないロボットに成長してしまい、生きた教育をできなくなった・・・ことに問題を生じていると言うべきでしょうか。現在学校教育の場で生きた教育ができる教師達は、イレギュラーであり、主流派に成ることはできません。教育委員会はロボット達に管理され、一層画一的な価値観を押しつけてきます。もはや学校教育さえも、少年教育を行う能力を失っています。

 今の日本社会で元気があるのは、ロボット達よりも、イレギュラー達です。何らかの理由で学歴社会からはじき飛ばされた人達や、自分や他人を騙しながら表向きロボットを演じ通した「考える葦」達が、画一的な価値観を押し付ける現代社会に抵抗しています。パワーの点では、ロボットの数倍の実力とその何倍かの潜在力を有しています。個々としてはロボットを圧倒していますが、全体としては数にも限りがあり劣勢に追い込まれています。所詮イレギュラーはイレギュラーです。
 しかし正しい道徳観とやらを植え付けられ、画一的な価値観とやらを唯一のものと信じるロボット達が支配する社会は危険なものです。新しいものは恒に異端であり、新しいものを生み出すことは恒に邪道であります。そんな社会はいずれ衰退するのは確実ですが、ロボット達は想像力が欠けているために危機感を持ち得ません。衰退を避けるためには、異端や邪道を推奨するべきなのですが、それを行う勇気と実力をロボット達は備えていません。実はイレギュラー自身に全ての権限を与えるだけのことですが、ロボット達には死んでもできないことなのです。

 管理された社会からは、必ずイレギュラーが出現します。管理しようとする圧力が高まれば高まるほどに、飛び出してくるイレギュラー達は先鋭化してきます。極端すぎる少年犯罪、偏った価値観による残虐行為、そして天才的な非行・・・正しく管理していないために顕れた現象ではなく、管理が厳しくされたために顕れた現象だと考えます。彼らこそ奇形児ではあるものの、これから社会に必要なパワーを持つイレギュラー少年達なのです。
 イレギュラー少年の持つパワーを社会に役立つベクトルに切り替え、ロボット支配に代わる活力ある社会を生み出すにはどうするべきでしょうか。個々の少年が持つ長所を極大まで育てることです。短所はさりげなく包み込んで極小化することも必要でしょう。残念ながらそこまで指導するだけのマンパワーはありません。ロボット教師に置き換わるだけのイレギュラー教師が不足しているのですから・・・。となれば管理社会向きの少年達は従来通りの学校教育を施し、イレギュラー少年達の受皿機関を作ればよいのです。彼らを対象とする教育機関か、青少年団体を作り、能力を最大限引き延ばすべきなのです。やがて彼らの集団が膨らみ、社会全体をリードできる日を夢見て・・・

 とはいえ、イレギュラー達を社会の害毒と見ている今の行政は問題です。イレギュラーこそが日本の将来を担うパワーを持つことに気付き、積極的な少年教育に励んで下さることに期待して、結びとします。

99.01.17
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