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政治の研究No.66
国歌制定のあり方

 国歌制定については第8回国旗掲揚に脱帽は必要か」で書きました。今国会での成立を狙った政府・自民党でしたが、国民の根強い抵抗を見て取って、法案制定を見送りました。ポン太個人としては、国歌制定には賛成ですが、その国歌として「君が代」は相応しくないという主張をしてきました。最大の理由は、国歌の歌詞が意味不明であることです。自民党の議員先生ですら正しく口語訳できないものを国民に唱わせようというのですから、無理な相談であります。
 学校の卒業式や公式の式典で「君が代」を唱うことを強制して、衝突を繰り返す事件が後を絶ちません。未だ国歌に指定されていない時点ですら、強制する者と、反発する者が居る以上、法制化などしては成らないことです。まず国民の意見を広く求めることに、政府・自民党は意を砕かなくてはいけません。

 国歌とは、そもそも強制されるものでしょうか。国民が誇りを持って歌える歌ならば、大いに唱われるのが普通でしょう。フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」は、フランス革命当時、ある陸軍大尉が作曲をし、これをマルセイユ駐留軍が唱いつつパリ入城したことが始まりです。いわば革命流行歌となった、この歌がそのまま今日の国歌となっています。米国国歌「ザ・スター=スパングルド・バナー」は英米戦争の際、米国弁護士が古いイギリスの旋律を使い作詞したものだと伝えられ、国威掲揚に使われつつも米国民の誇りが刻まれています。
 世界一古い国歌はオランダ国歌だと伝えられ、この歌は対スペイン独立戦争の最中に生まれたとされています。このように自然発生的に生まれ、国家の栄光、国民の伝統、国土の繁栄などを盛り込んでおり、国ごとに成立の過程などは異なりますが、いずれも国民が誇りを持てる歌であることに変わりはありません。

 対する「君が代」は官制歌です。イギリスのお節介な軍楽長が日本に国歌が無いことを憂え、その話が薩摩閥の大物である大山巌に伝わりました。大山は薩摩で祭礼や盆踊りに使われていた「君が代」を勝手に国歌に採用したということです。作曲は外国人にも持ちかけたものの、平安以来の雅楽と洋楽の大家であった宮内庁省楽部の人物によって作曲されたと言うことです。非公式かつ秘密裏に生み出された故に、「君が代」は結局国歌との認知を受けていないのです。ちなみに「君が代」の歌詞は古今和歌集に「詠み人知らず」と記されたものが、文献上の最古とされています。
 諸外国では国民に広く流布してから国歌に指定された場合と、広く制定を呼びかけ国民の承認を経てから国歌に指定された場合とが多数を占めています。対する日本は、一軍人が推薦した歌詞を、一役人が勝手に節を付け、これを軍事政権が広く流布し、いつの間にか国歌もどきに成ってしまったという特異なものです。今さら国歌に指定しようというのも横着な話です。

 しかし何故「君が代」に拘るのでしょうか。既に批判があるように、もはや現代の口語とはかけ離れ、しかも歌詞の意味さえ定説のない歌を、戦争で悪名ばかり高めた曰く付きであるにも関わらず、そのまま採用しようとする姿勢が理解できません。21世紀を目前とし新時代への希望でも謳い込んだ国歌を作詞・作曲すると良いでしょう。国際的ミュージック・アーティストが増加した今日、一般公募で国歌候補曲を募集し、国民投票で最優秀だったものを国歌にすると良いでしょう。
 ここで一言。政府・自民党の立場からすれば、「君が代」こそ望ましいと思っているのでしょう。国民の意志が一致団結し、国家よりも国民を称揚するような国歌の出現は、都合が悪いのです。「君が代」であれば多くの支持を得られない故に、国民の意志が揃うとは思われません。式典などで強制することで国歌に対するイメージを低下させることも狙いかも知れません。仕方がないので、我々から自然発生的に名曲を生み出して流布し、もはやこれしかない、と言うほどの国歌候補を生み出さなくては成らないかも知れません。

99.04.30

補足1
 世界主要国の国歌については、に詳しいので、参照してみて下さい。またhttp://www.infosnow.ne.jp/siis/koron/KOKKA.htmlを一部参考にさせていただきました。

99.04.30

補足2
 在外日本公館が配布していたリーフレットに、君が代の歌詞は「天皇の治世」と説明していたことが明らかになりました。野中官房長官は「誤解を生む」として配布中止を指示したそうですが、果たして誤解なのかどうか。

99.06.02

補足3
 6月11日、政府は2度見送ったはずの今会期中の法案成立にチャレンジしました。君が代の「君」は象徴天皇であるとする政府統一見解を発表すると同時に、「国旗・国家法案」を閣議決定しました。自自公連合の下で、まず確実に成立することでしょう。
 しかし、実質的に「天皇の治世」であることを政府は認めたわけで、補足2にあるような野中官房長官のコメントと矛盾しています。また主権在民の日本の国家が天皇の治世を讃えてどうするんでしょうね。もはや天皇陛下によって国が治められる時代でなくなったのですが・・・。

99.06.21

補足4
 7月22日に衆議院で国旗・国家法案が通過しました。三度目の正直、野中官房長官もホクホクでしょう。自自公は全員賛成で、共社は全員反対でした。自主投票に決めた民主党は半分賛成、半分反対で、合計賛成403、反対86、欠席9(うち自民は6)の圧倒的多数で成立しました。
 同法案決議前に、民主党から国旗のみにしてはどうかという修正案が出されましたが、圧倒的反対で否決されました。さて民主党、修正案を出すぐらいなら本法案に反対するのが当然(でないと修正案の意味がありませんよね)なのに、自主投票でした。結果から見ると党内調整さえもできずパフォーマンスだけだったかと・・・。

99.07.24
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