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政治の研究No.140
特殊法人・公益法人の改革

 昔から、特殊法人と公益法人は、国家行政の癌だと言われてきました。前者は巨大で返済不能な不良債権を抱えるが故に、後者は不明朗な会計で多額の私益を追究しているが故に、です。小泉改革の目玉の一つが、特殊法人と公益法人の見直しです。最終目標は全廃止でしょうが、当面は大口に絞っているようです。

 特殊法人とは、特別立法により設立される法人で、政府関係法人のことです。総務省による審査を受けますが、事実上は監督官庁の植民地です。役員の大部分を官庁OBで占め、費用対効果はそっちのけで、ジャブジャブに資金を使っています。事業として採算ベースに乗っている法人もありますが、大部分は国庫の支援を受けても、多額の負債を抱えています。
 公益法人とは、広く公益を追求するために設立される法人で、社団法人と財団法人があります。現在問題となっているのは、特殊法人や官庁が主導で設立した公益法人で、公益を確保するという理由で事業を独占するなどし、結局は私益を追求している法人を指します。特殊法人と同様に、官庁OBの受け皿であり、多額の資金を政治献金や裏金としてプールするなど問題を抱えています。中には、業務の大部分を外部に丸投げし、手数料だけをピンハネする公益法人もあります。

 改革と一口に言いますが、するべきことは廃止か民営化です。事業として、役割を終えている法人、採算の合わない法人、民業で代替可能な法人は、廃止されるようです。これまでも同様の議論がありましたが、統廃合や看板の掛け替えで逃げを打ってきた悪質な法人もあります。役割を終えたものや採算の合わないものは、早期廃止を行わないと国費の無駄が増えます。民業で代替可能であれば、官業による圧迫を取り除いて、発展させることが必要です。競争原理を働かせることで、コスト意識やパイ拡大を向上させる意味もあります。
 その最大のものが郵政事業ですが、石油事業・住宅事業・道路事業・金融事業なども挙がっています。公益法人に対しては、廃止や解散を命じる権限がありませんが、間接的に誘導することは可能に成っています。事業を整理する過程で、多くの官庁OB達が路頭に迷いますが、十分すぎるほどの生活資金は得ているはずですので、これ以上国費で養う必要性も無いかも知れません。おそらく国家公務員の人事制度も含めた改革が必要になるでしょう。

 「法人改革=廃止・民営化」であれば、困るのは族議員たちです。彼らの飯のタネが失われるわけで、こらから巻き返しを進めると思います。小泉改革に正面から対決することは無いでしょうが、様々な圧力や抵抗を示すのは間違いありません。このため、小泉首相は期限を区切っての短期決戦を狙っています。果たして、改革は実現するのかどうか・・。法人改革ができないようでは、政治・経済の構造改革は一層困難です。その手腕が大いに試されることでしょう。
 それにしても、我々国民からは、特殊法人や公益法人の活動内容がよく見えません。何となく巨額の資金を持ち、それとなく事業を展開していると思いますが、どうも実感が湧きません。とくに公益法人には、有形無形の国家支援が行われているのに、表面的には分かりません。補助金や調査資金の名目で出費される巨額の国費が、どうして見事に消えていくのか、不思議に思います。
 ただし大事なことは、残すべきものは必ず残すべきだということです。性急に何でも改革してしまうと、意外なところで国民生活に驚異を与えかねません。慎重を期しつつも、着実で公正な改革が行われることを期待しています。

01.08.12
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