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経済の研究No.25
山一證券総会観戦記(前編)

 山一證券の総会に行ってきました。解散総会にあたる総会であるので、株主はちょっぴりセンチになっていた。てっきり謝罪をして涙でも見せるのかな、、、少しは事情を説明してくれるに違いない、、、と淡い期待を抱きつつ集まった感じだった。債務超過である以上は出資金の返還が望めない・・・との空気もあり、あきらめムードが強かった。 6月26日午前10時に始まった解散総会は、そんな株主の期待を大きく裏切る、とんでもない総会であった・・・以下、観戦記を綴ってみたい。

#N8月に三木氏の辞任を受けて就任し、11月に自主廃業を決定した野澤社長。「定時株主総会召集ご通知」に記載の「第58回営業報告書」を読み上げ始めた。日経新聞などは「野澤社長が陳謝し・・・」などと書いているが、実際は営業報告書の内容を読み上げただけである。当然にそのセリフは社長が考えたものではない。その前に定足数の報告があった。山一證券は40億株の株式発行が出来るが、転換社債の株主転換が進まなかったこともあり、発行株式残高は12億8860万株である。このうち自己保有株式と単位未満株を除く11億8100万株が議決権を行使できる株式数である。これに対して出席株主の株式は1億4000万株(のちに1億7200万株)、包括委任状相当分は1億3100万株、葉書送付分は1億8000万株の計4億6000万株であった。過半数にも満たない中、総会は強行開催された・・・本来なら仕切直しではないのか、と思う中で開始されたのだが・・・

 そもそも株主総会が2,325社も一斉に開いた6月26日に解散総会を開くのがおかしい。総会屋対策とも言えるが、一般株主が集まれないのも当然の理由。それに応えて誠実な応対をすべき経営陣には、なごんだ空気が漲り、社長の顔には余裕の笑みが浮かぶ。なぜ・・・?というのが正直な感想。営業報告書の読み上げの後、五月女(さおとめ)会長が書面での質問状に対す回答を始める。紋切り型で不誠実な回答。このあたりから変な雰囲気が漂い始める。まず転換社債の繰上償還は「返還時期が到来したので大蔵省の許可をいただいて返還した」、監査法人が一部監査に疑義があるとした点は「(監査法人が)他社であることもあり分からないが、期間が短かったので対応できなかったものと考える」、行平会長ほかへの民事訴訟や資産保全の仮処分申請は「考えていない」、そのほか具体的な経緯については「総会の趣旨に関係のない事項なのでお答えできない」などなど十数項目を適当に流していた。次に出席株主による質疑応答・・・ロングラン総会の幕開けである。

 株主は事情を察した。経営陣は解散決議に必要な発行株式1/2以上の出席が見込めない時点で特別決議である解散決議ができないことは明白だ。あとは1/10以上の株式を集めて裁判所に解散請求をすれば良いと考えたのだ。この日3億株の出席株主が集まれば話は違ったのだろうが、経営陣は楽観論に走ったのである。それならば・・・と株主は矢継ぎ早に厳しい質問を発した。まず最初の発言者が立ったが、マイクの用意がない。他の株主が「聞こえないぞ」とどなると、社長はヘラヘラ笑って「もっと大きな声で発言を」とコメント。「マイクを用意しろ」「大きな声では何事か」「壇上の社長のマイクで話させろ」など非難囂々。3分ほどしてマイクが到着して質疑が始まった。
 質疑における社長の態度は一貫している「出席株主番号は何番ですか?」「話がよくわかりません」「ご意見(ご質問なのだが・・・)は伺っておきます」「はい、次の方は・・」とはぐらかす態度に終始する。答えにつまる質問には度々会長他と相談し「自分で決めなさい」「あなたのご意見を伺っているのです」「本当の社長は後ろにいるんじゃあありませんか」と批判された。たびたび議長(つまり社長)交代を動議したが、いずれも動議として受け付けなかった。また現在の雇用社員の給与に関する質問に対して手元資料がない、記憶が定かでないと応えた人事担当常務の退席を求めた動議には白紙委任が出席数を上回る(本当は4000万株も下回っていた)として却下した。

98.06.26
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