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政治の研究No.98
公営賭博 の 真実性

 日本では、民間団体が賭博の胴元になることを禁じています。例外的に認められているのがパチンコですが、これも現金に換金するのは禁止するという建前で許されています。もちろん換金されていますが・・・建前上は。それはさておき、賭博で公営でなくてはダメな理由はあるのでしょうか。
 日本の公営賭博を見回してみると、それぞれの胴元が異なる官庁であることに気付かれますね。競馬は「馬は牧場で育てる動物だから」農林水産省、競艇は「動力で走るモーターボートを使うから」運輸省、競輪は「自転車振興は通産省の管轄だから」通商産業省、宝くじは「収益金を自治体の財源に使うから」自治省、これから導入されるサッカーくじは「スポーツ振興に使うから」文部省、パチンコは「暴力団対策の警察の管轄だから」警察庁・・・と各官庁が自前の財源を持ちたさに賭博を独占していると考えています。

 賭博商品は種類が増えれば魅力も増えるのだと思いますが、それによって賭博に参加する人間が増えて、使われるお金が増えるかどうか確定的でありません。また全体として増えるとしても、個別の賭博商品は減るかも知れません。そうであれば、官庁によって賭博を独占して、パイが小さくならないよう守る必要がある・・・ということのようです。
 もしも民間に賭博を解禁すると、不正を働く者が増えたり、暴力団などの資金源になったり、不都合なことが起きるのだそうです。しかし、不正を働けばユーザーからの信用を落とすのは確実で、また胴元になる人間から一定額の保証金を公的に預かるなどすれば、ある程度の不正抑止が可能です。現在でも非合法なノミ屋がありますが、長年続くものはそれなりに不正をせず信用を維持している証拠でしょう。暴力団の資金源になるのは、これはある意味仕方がありません。彼らも民間人であるに違いはなく、彼らが資金を集めるとすれば彼らが魅力的な商品を販売しているからと言うことになります。彼らの資金源にしたくなければ、より魅力ある商品を別の民間に作らせれば良いのですから。

 今年はサッカーくじ論争にケリを着け、ついに発売が決まりました。しかし本当に継続的に売れるのか疑問を感じます。国民のサッカー熱は冷めており、あの難しい組合せを当てるために熱心に研究する人はどれだけ多いでしょうか。宝くじ以上に販売チャネルを増やすことでユーザーを拡げようとしていますが、結果的に個々の窓口での取扱額が少なくなり、コスト分を手数料で稼げない窓口が増え、最終的に転けてしまうような気がします。

 宝くじは、ジャンボの最高賞金を前後賞込みの3億円に設定しましたが、最高賞金引き上げは、ユーザーの射幸心を煽って買わせる目論見です。しかし設定額がもはや現実的で無くなってきており、思うようにユーザーは増えていないようです。冷静に考えれば、以前より1等賞が2.2倍も当たりにくくなるわけですから、ユーザー離れが進みそうです。
 一方でナンバーズなどの商品は、当たり易さを背景に順調に伸びているようで、新たに投入したロトくじの成長性が気になります。現在のところ、ジャンボもナンバースも還元率は40%と低率です。加えて当選金の配分に細工が入っているように感じるのは私だけでしょうかねぇ。もう少し透明性のある運営をして欲しいと思っています。

 最後に競馬です。競馬は中央競馬と地方競馬がありますが、最近は地方競馬の地盤沈下が激しいそうです。日本中央競馬会(JRA)が派手な宣伝を繰り広げ、場外馬券売場を地方展開した結果、地方競馬の射倖性が低下して客離れを起こしているというのです。JRAは地方競馬にも売場を開放して競馬全体のパイを拡げようと動いているようです。中央競馬は土日だけですが、地方競馬は平日夜間もありますから、全体としてパイは拡がると見ているのです。
 しかし、世の中は不況。競馬を支えていた中高年層の金回りは悪くなり、女性ブームも一頃よりは低調なようです。商品のラインナップを拡げるよりも、分かりやすく当たりやすい商品を生み出す方が活性化になるのではないでしょうか。

 またも纏まりがありませんが、一つ提案。賭博を民間に解禁しましょう。より安全でより面白い商品が増えてくれば、アングラの賭場は消えていきます。ノミ屋だって自ら化けていかないと存在意義を失います。あちらこちらで賭博が行われるのは監督上困るというのなら、出島でも作って賭博の楽園を作ればよいでしょう。和製版ラスベガスは景気回復に一役買うのではないでしょうか。

99.09.14

補足1
 東京都がお台場にカジノを作るという計画は、このまま消えてしまうのでしょうか、残念な話です。

99.09.14

補足2
 良い賭博、悪い賭博という選別はできないと思いますが、望ましくは射幸心を煽りすぎない賭博が良いですね。勝ち過ぎもせず、負け過ぎもしない、ストレスをほどほどに解消して帰れるシステムであれば良いと思います。射幸心を煽りすぎてしまったのは、パチンコです。昔のように手弾きでチンタラ打っていた時代なら、パチンコで破産するのも大変な話でしたが・・・ジャパニーズマフィアが儲けるのはダメでコリアンマフィアなら構わないというパチンコ行政もどうなんでしょうか。
 本文にも書きましたが、宝くじは射幸心を煽りすぎてユーザーを失った観があります。本当は100万円程度が一定の確率で当たる方が、現実的で魅力的ですよね。逆にロトくじなどで賞金の繰り越し・・・という欧米スタイルで射幸心を煽れば確率はそのままで夢が買えるのですが。その前に還元率を引き上げる方が先決ですね。魅力を持たせたければ、第一勧銀扱いの独占を無くすとともに、自治体の取り分を減らしましょう。

99.09.14

補足3
 お客様の情報を紹介させて頂きます。パチンコがどうして手打ちを止めて電動になったのかという理由は、単位時間当たりの打ち出し数が多くなる(=儲けが大きくなる)ということだったそうです。それだけ損も大きくなるわけですが、射幸心を煽って沢山の金をつぎ込ませるには好都合と言うことですね。
 もう一つ。中央競馬では「ワイド馬券」というのが発売されるそうです。1,3着、2,3着の当たりでも当選金が貰えるという優れもので、大井競馬場で試験的に導入して大人気だそうです。当選金は少額になりますが、すでに競馬も当たりやすいギャンブルを始めていたのですね。不勉強を反省しております。

99.09.20

補足4
 馬券売上げの還元率は75%です。15%がJRAに回り、残る10%とJRAの当期利益の半分が国庫に納付されるそうです。JRAは配当金の10円未満を一律切り捨てしており、0.47%相当が未還元との話もあるようです。
 船券売上げの還元率は同じく75%です。残る25%が地方自治体の収入ですが、収入金のうち日本財団(旧・日本船舶振興会)に13.2%もの納付金が発生し、純益は26%程度に留まるようです。日本財団は少し体質が変わってきているかも知れませんが、相変わらず親密団体への補助金バラマキの姿勢が残っているようです。
 以上の数値は、田中慎典・木庭貴和「図解・日本のカラクリ」(サンマーク文庫)から引用しました。

99.12.18

補足5
 宝くじは、第一勧業銀行の専売になっています。これは宝くじが、戦前に日本勧業銀行の発行した「勧業債券」を起源にしているためです。当時の勧業銀行が国策で運営される特殊銀行であったことから、事実上の国債でした。その資金は主として軍事産業に投入され、太平洋戦争においても重要な資金源となったそうです。
 もともと勧業債券には「割増金」と呼ばれる抽選賞金(最近の中小金融機関がやっているようなもの)が付いていました。あくまでオマケだった割増金が、人気を債券人気を煽るために額面の100〜200倍へ膨らんだのは当然の帰結で、戦争拡大でさらに1,000倍へと倍率が膨らみました(当時は「報国債券」と呼ばれました)。
 現在の宝くじは、割増金が多様化した結果で、戦後に政府公認の「富くじ」制度に変わったものです。10枚に1枚の末等があり、1割の割り戻しがあるのは、債券の名残だという話です。

99.12.22

補足6
 全国的に競輪事業が危機的状況にあるそうです。競輪は自治体が開催権を持つものの、開催権と競輪場の運営は民間であるため、競輪ブームの低迷がそのまま自治体の赤字になるということです。単独自治体の場合と複数自治体の競輪組合の場合があるそうですが、いずれも自治体による開催権返上が相次いでいるとのことです。
 4月12日に北九州市は、門司競輪場からの撤退を決め競輪場を廃止すると発表しました。同市は小倉にも日本最古の競輪場を持っているものの、長引く低迷による赤字に耐えられなくなったとのことです。現在全国に50カ所ある競輪場の内、赤字は13カ所に拡大しており、1995年に255だった開催権を持つ自治体も、2000年度に128まで半減しているそうです。競輪場の入場者数が、1991年度から半減して1,750万人ということで、人気落ちは間違いありません。
 その他、経済産業省の外郭である自転車振興会との間で交付金の納付についてのトラブルも持ち上がっているそうです。事業赤字である中での交付金負担には応じられないということが理由で、撤退自治体が相次ぐことになれば、自転車振興会の収支バランスが崩れて補助金を受けている公益団体にも影響が出そうだということです。

01.04.21

補足7
 発売が始まったサッカーくじは、「toto」の愛称で呼ばれているようです。多数のショップが立ち上がって鳴り物入りで始まりましたが、正答者が多く配当金が予想以上に小さいことが指摘されています。理論的には当てにくいはずのくじが、当たりやすいことによって混乱が見られます。しかし、一等賞金1億円という射幸心を煽りすぎるものよりは、小さな夢があって良いのかも知れないです。
 本家本元の宝くじは、第一勧銀と同じみずほファイナンシャルグループの富士銀行が販売に参入するそうです。銀行のATMでナンバーズが買えるそうですが、何となく味気なく夢がありませんね。当選金は自動的に口座に還元されるため、償還漏れが無くなって便利かも知れないですが・・。

01.04.21

補足8
 ついに2等賞が1億円の宝くじが売り出されました。近頃は、宝くじ売り場の前に、オヂサンが呼び込みしているのをよく見掛けます。昔は、粛々とお客が並んでいたものですが、そこまで必死で売らなくては困るのでしょうか。夢を売る商売も大変です。
 2等まで高額になるということは、ますます3等以下の当たりが減ることになります。国が胴元なら、多くの国民に小さい幸福を配るのが筋だと思うのです。しかし、射幸心ばかり煽って、なかなか当選させない方向に向かっています。我々としては、宝くじが多く売れることのありがたみは、全くありません。理論上は当選確率は変わらないのですから。沢山売れてもバック率は同じで、人件費等に持って行かれるだけなのです。
 そろそろ射幸心ばかり煽るのはやめて、100万円ぐらいが沢山当たるようにしましょうよ。しかし、生まれて32年になろうとしていますが、どんなマスメディアでも1等が当たった人を見掛けないのは、何故なのでしょう? 一人ぐらい目立ちたがりがあっても良いと思いますが。身の危険と引き替えに・・。

01.05.20

補足9
#N度は、公演ギャンブルから撤退する自治体が一層増えるそうです。門司競輪・新潟県競馬・西宮競輪・甲子園競輪の廃止が決まり、岸和田競輪・和歌山競輪・平塚競輪からも一部自治体が離脱するなどし、2001年度で34自治体が撤退するようです。
 競輪が目立ちますが、いずれも赤字幅が拡大しているための撤退で、とくに新潟県競馬は累積で66億円の赤字(年度末見込み含む)となる模様です。職員解雇などを含めて債務は80億円を超えるそうです。過去の黒字分を基金として積み立てている自治体もあるようですが、撤退したくとも撤退できない自治体もあるようです。かつては財政を潤した公営ギャンブルも下り坂です。自治体が胴元をするギャンブルも、そろそろ幕引きかも知れませんね。

01.12.29
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