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政治の研究No.29
羊に従う羊の群

 には、大人しい動物のイメージや、生け贄にされる哀れな動物のイメージがあります。しかし本当は攻撃的で貪欲な動物なのです。通常は群を成して行動していますが、格別の統率者が居るわけでもなく、何となく同じ方向へ行動します。ただ一度エサ場を見つけると、食べることに夢中になって、いつまでも食べ続けています。そのときは群も消滅し、ただただ自己満足を満たすために行動します。こんな羊ですから、羊飼いが笛や犬を使わなくては、群に戻すことが難しいのです。なかなか群にリーダーを決めて群を監督させることはできないようですね。

 我らの「永田町・自由民主牧場」では現在多数の羊が放牧されています。かつては怪物と呼ばれるほどの狼やハイエナも居たようですが、近頃はすっかり形を潜めたようで見つけられません。一見狼風の自称リーダー羊もいますが、その統率力のなさ、実力不足は周知のとおりです。近頃牧場の羊たちは、多数決で新しいトップを選出しました。巷間ではピザとか鈍牛とか呼ばれていますが、仁徳があるとかで群の中では人気があるようです。気配りの羊とも、調整の名羊とも言われています。強引に群を引きずるような狼型のトップよりも、まとめ役としての技量がある穏和なトップである方が、いまの平和ボケした羊の群には適しているかも知れません。
 調整役という仕事はトップには適さないものです。普通は補佐役が調整役としてトップを支えることで、些事から開放されたトップは一路驀進しなくては成らないからです。そんな大胆な組織作りが、風雲急を告げる今の自由民主牧場には必要だったと思いましたが、結局は調整役が色気を出してトップの座を占めてしまいました。トップとしての仕事に振り回されて、得意の調整能力は揮えないかも知れませんね。本当に今の危機を乗り切ることができるでしょうか。また慣例に従って、牧場内に自治会を作りましたが、その顔ぶれを見ると、トップが調整したというよりも、調整させられた感が強いです。一致団結して問題に対処できるのかどうか、今から不安でいっぱいです。
 それでも、有能な補佐役を得ることができればトップの負担も軽減されるのでしょう。ブレーンの一人を牧場の外から自治会役員に登用しました。かつてトップを務めた長老にも参加して貰いました。しかし補佐役に適した忠誠心と能力を兼ね備えた羊は見当たらないようです。周囲には、今にも策に溺れそうな策士羊や、公約を全然果たさないウソツキ羊ばかりで大変なようです。そんな問題羊を管理するためにトップのパワーが割かれるとしたら本末転倒ですね。トップは牧場内の経営よりも牧草地全体の運営に専念するべきですから、問題羊たちは牧場外へ追放してしまいましょう。あるいは檻の中へ送り込んでも良いのではないですか?

 ともかく、自由民主牧場は大変な危機にさらされています。近くには名称の紛らわしい民主牧場や自由牧場が建ち並び、牧草地の奪い合いで激しい競争が繰り広げています。しかし肝心の牧草地は肥料ためか、害虫のためか、あるいは土壌のためか荒れ放題です。昨年にはいくつかの牧草地が壊滅し、このまま放置すると新たにいくつかの牧草地が破綻する危機的状態にあります。ですから、牧場内の問題や牧場間の問題には最低限の手を打った上で、牧草地の再生問題をまず優先するべきです。もともと牧草地の管理は管理人を雇って委ねていましたが、管理人が好き放題を尽くしたお陰で、打てる手は限られてきています。今は新しい牧草地の建設に金を使っている場合ではなく、既存の牧草地の再生に使うべきだと考えています。急がなくては、海の向こうから悪性の農薬散布にやって来たゲージンたちに牧草地は全て枯らされてしまいます。

 今後も健全な牧草地経営と牧場経営を続けるために、たとえ穏和なトップであっても、一念発起して難問題に積極的に取り組んで欲しいものです。だってトップには自分が成りたくて成ったのでしょう? 成るには成ったが、我々牧草の願いを聞かないなんてことは許されませんよ。

98.08.13
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