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政治の研究No.41
商品券支給構想の疑問

 商品券支給構想が話題になっています。景気対策として官製商品券をばらまくという話であります。住民登録台帳に記載された国民全員に一人当たり3万円ずつの商品券を配るのだそうですが、手間と経費の割には景気浮揚に役立つかどうか疑問との声があります。総額4兆円の大盤振る舞い、野党の旧公明党系の議員が唱えている間は夢のある話でしたが、何故か与党自民党が同調して、実現の可能性が高まりを見せています。ちょっと検証してみたいと思います。

 第1の疑問。発行手数料が掛かる割には、官製商品券と日銀券との違いが明確でありません。有効期限を印刷した日銀券を配った方が、偽造の心配も周知の手間もなくて良いように思います。どうせ印刷は大蔵省印刷局が担当するのでありましょうから、無意味なことをするものです。また商品券である以上は、チケット屋が取り扱うことに何の障害もありません。転売禁止を唱ったところで意味のない話です。また何故少額券なのでしょうか。発行枚数が増え、国庫負担の発行手数料が嵩みます。
 第2の疑問。どうやって配布するのでしょうか。政府構想では郵送だそうですが、ポストに投函したのでは盗まれる危険性が高いです。住人の誰かに手渡したとして、同居人の商品券を全て盗む可能性が無いとは言えません。郵便屋さんも人間ですから、配達区域住民宛の商品券を全て持ってトンズラって可能性もあります。平均200世帯700人の商品券を盗めば2,100万円の大金になります。また郵便屋さんが配達中に襲われる可能性もありますし、郵便物の抜き取りも心配です。。。また住所変更の手続忘れや発送手続ミスで、商品券を受け取れなかった国民は、どうやって請求すれば良いのでしょうか。役所の窓口等で配布するとしても、国民全体に行き渡らせることは困難でしょう。
 第3の疑問。どこで使わせるのでしょうか。日本全国津々浦々で使わせるのは無理というものです。偽造商品券が使われないためには、真贋判定の仕方、商品券の換金について、充分に周知徹底させる必要があります。身分証明書の提示・・・などと言っていますが、少額の買い物でいちいち身分証を提示させるのも面倒な話です。だからといって大手スーパーなど特定店舗での利用に限定すれば、選から漏れた事業者は不平を申し立てるでしょう。また少額券を止めて高額券にすれば、個人商店なども選から漏れることになります。また事業者が顧客の商品券を預かり、それを持ち込むことで現金を手にすることになると、事実上の商品券換金が可能になってしまいます。本当に商品やサービスの対価として使われた商品券かどうかは、見分ける方法がないでしょう。
 第4の疑問。積極的な消費に結びつくのでしょうか。少額商品券では、だれもが生活費に使ってしまうでしょう。有効期限が1年間と長いので衝動買いは期待できません。おそらく全て生活費に使われ、余った現金が貯蓄に回されることでしょう。総額4兆円と言えば巨額ですが、個人個人が細く長く使ってしまうと全体の消費は増えないのではないでしょうか。また近頃では地方自治体で成功したケースが紹介されていますが、特定商店街の金券で成功した事例のほかは、額面の何割引きかをした商品券を消費者に購入させ、割引相当額を自治体が負担した事例でしか成功していません。
 第5の疑問。なぜ自民党が賛成に回ったのでしょうか。公明党の看板政策に同調してみせることで、参議院での公明系議員の協力を得ようという魂胆です。数の上では公明系議員と保守系無所属議員を加えれば参議院で過半数を占めることが可能です。そうなれば民主党に振り回されず、法案を通すことができるという打算しかありません。公明党が主張している間は夢のある政策でしたが、自民党が相乗りした時点でドロくさい政策に変わってしまいました。

 そこで提案。個人商店に申し訳ないのですが、高額商品券で釣り銭が出ないことにしてみましょう。国民が不要不急の高額商品を購入してくれる可能性が高いと思われます。大手スーパーや百貨店など特定流通業種に限定しましょう。大手なら真贋判定に協力させられますし、偽物を掴んだ場合に店舗側に責任を押しつけられます。しかも胡散臭い換金屋を排除できます。有効期間は支給後2週間程度にしましょう。短期に集中して消費されれば景気浮揚になるでしょうし、期間が短ければ偽造の余地が少なくなります。たとえ家族の分でも同時に二枚以上使えないことにしましょう。そうすればチケット屋が介在するメリットが少なくなりますし、高額の買い物を家族数の回数だけ繰り返してくれます。
 しかし商品券支給構想は愚策です。手間暇が掛かる割には実効性の程は疑問です。本来はやはり継続的に減税を続けることです。毎年2兆円規模の減税を継続すれば、誰もが消費に回すでしょう。毎年毎年「減税は今年限り」と言い続ければ、誰も消費に回しません。また毎年減税方法が変わるのも問題で、誰もが減税を実感できないことになります。今度の商品券構想も毎年実施するなら価値がありますが、単発では市場の混乱を招くだけです。政府・自民党は政策の目先を変えたいようですが、国民は目先を変えられることを喜んでいません。むしろ困惑しています。

98.10.25

補足1
 これまで減税の恩恵を受けなかった低所得層だけに配布しようというコメントが出ています。平たく言えば、直接税は全く納付していない層です。しかし低所得層はこれまでも課税免除や配偶者控除、扶養者控除などのメリットを受けてきました。低所得層が全て貧困層だという偏見があるようですが、必ずしもそうではなく、むしろ可処分所得の多い層であったりします。やはり減税は税負担を負っている者を対象とするべきです。また貧困層に商品券を配布したとして、積極的な消費に向かうでしょうか。生活費の一部として使い、無駄遣いはしないでしょうし、自分は貧困者であると宣言して歩くことに躊躇いも抱くでしょう。
 あともう一つ。「恒久減税」が未来永劫続く減税だと思っている政治家さんがいます。景気が回復すれば少し増税して国庫の体力を回復することは当たり前のことです。「恒久減税とは、景気が完全に回復するまで増税はしないということだ」とコメントすれば国民も理解するはずですよ。

98.10.25

補足2
 野中官房長は「期限付き商品券」の発行主体と使用区域を市町村単位とするべきだと発表しました。交付対象者を把握しやすい、できるだけ発行地域で使われることが望ましいとコメントしました。しかし市町村レベルになると一層商品券の配布方法などにバラツキが出る上、商品券の取り扱いが難しくなる問題があります。とくに交付対象者を把握しやすい、という点には疑問があります。水増しなどで変な工作が行われなければ良いのですが・・いや、それが狙いかも知れませんね。

98.10.28

補足3
 商品券構想は具体的な詰めが進んだようです。11月10日に自民党と公明党の幹事長・政調会長会談が開かれて、15歳以下の子ども(2,088万人)、老齢福祉年金や児童扶養手当、特別障害者手当の受給者(336万人)、低所得および住民税非課税高齢者(1,085万人)の一律20,000円を支給する線で落ち着いた。額面は1,000円、使用期限は半年間、換金・流通は禁止(たぶん記載のみ)、使用店舗は自治体が決定する、のだという。以上jamjam記事から数値&ワードを引用しました。
 支給総額は7,000億円に後退するとともに、減税ではなく、弱者支援に完全に形を変えています。とくに支給対象を限定しても必要経費は削減されず、経費と合わせて1兆円を超える可能性も高いと指摘されています。自公両党の人気回復には期待できますが、景気回復への効果は不明です。また非納税者のみへのバラマキと決まることで、バランス上納税者への大幅減税も行われると見られます。結果として国庫への負担は必要以上に膨らむ危険が増大しています。

98.11.11

補足4
 結局は補足3の路線で決まりのようです。これが景気対策なのでしょうか。一応、近頃話題のプレミアム商品券(購入額に対して1割から2割のプレミアムのついた商品券)の事例を紹介しておきます。日経流通新聞の11月19日号に特集記事があります。東京都港区は他に先駆けて6月に導入し、区内共通商品券3億円分を売り切ったそうです。額面500円の商品券を10万円以上購入すると10%のプレミアム、100万円以上なら20%のプレミアムです。プレミアムは全額区の負担です。板橋区は9月に商品券を発行し、負担は板橋区商店街連合会と板橋区で折半(500万円ずつ)でした。11月には埼玉県川口市、大阪市、広島県福山市の導入が決まっています。さらに練馬区、港区(再発行)、千葉市も追随する模様です。比較的少額の負担で景気拡大効果が出ているようです。同じ事を8,000億円(実際はそれ以上になると予想されますが、人件費は計上不能です)ですれば・・・どんなに景気拡大になるでしょうか。

98.11.23
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